カラーマネジメント対応ソフトの操作

Illustratorで印刷用CMYKデータ作成 印刷結果の色を確認する方法

投稿日:2017年1月5日 更新日:

 Adobe® Illustrator®等でオフセット印刷用のデータを作成する機会が増えています。
 また、印刷の標準化もすでにかなり進んでいます。
 しかし、依然としてデータ作成段階では印刷結果がどういう色になるか確認できない環境で作業するケースが多いようです。
 ここでは、IllustratorでCMYKデータ作成段階で、CMYKのオフセット印刷の結果がどういう色になるかディスプレイ上で確認する方法をご紹介します。

目次

前段階の説明1 同じCMYKのデータでも、印刷の加減で色は変わる

 同じCMYKのデータを使ってオフセット印刷をしても、印刷の加減などによって色は変わります。

オフセット印刷のおおまかな流れ

 Illustratorで作成したCMYKデータからオフセット印刷をするとき、おおまかには以下のような流れで進みます。

  1. RIP(網点作り装置のようなもの)で網点にする
  2. 網点を刷版に焼きつける
  3. 刷版を印刷機にセットして印刷する

 RIPでは印刷する用紙などの条件によって網点の間隔を決めたり色々処理が変わります。
同じCMYKデータでもコーティングされたコート紙に印刷するときとコーティングされていない普通の上質紙に印刷するときなら作成される網点は変わります。

 網点刷版に焼き付けるとき、普通はデータのCMYKの各版の%と同じ網点%で出力します。印刷機との兼ね合いで特別事情があれば少し別の調整をしている場合もあるかもしれません。

 印刷機で印刷するときは紙にのせるインクの量は人が調節でき、インクの量が変わると色も変わります。その他色々な条件で色や濃さが変わります。

単純にCMYKデータから印刷すると色はまちまちになる

 以上のように、Illustrator等で作成したCMYKデータから印刷する場合、何種類も装置を通って、人の操作も加わるため、単純に作業すると色はまちまちになります。

CMYKの色は正確に決まっているのではないか。その証拠にCMYKカラーチャートが販売されている、という疑問について

 デザイナーの人などが使うCMYKのカラーチャートがあります。
 それを見ると、確かにCMYKの各掛け合わせの平網の色は明確に決まっています。

 カラーチャートのCMYKの色は何なのかというと、上記の説明のようなRIP、CTP、印刷機で印刷するときの条件を、何らかの条件に決めて印刷したときの色を示したものです。

 カラーチャートのどこかを探すと、印刷条件が示されていると思います。あくまでその印刷条件におけるCMYKの印刷結果の色が、そのカラーチャートに掲載されている色だということです。

※もしどこにも印刷条件が書かれていないCMYKカラーチャートがあったら、不親切なカラーチャートだということで、あまりシビアな作業では使えません。

 そのCMYKカラーチャートと異なる印刷条件、例えば異なる用紙、インク、ドットゲインなどで印刷すると、カラーチャートに掲載されている色とは異なる色に印刷されます。

カラーチャートの例

前段階の説明2 印刷関連業界でCMYKの標準の色を決めてある

同じCMYKデータで印刷結果がまちまちだと不便

 同じCMYKのデータから印刷しても、印刷結果の色がまちまちになると何かと不便です。

不便さの例1 時間が空くと色が変わってしまう

 1年前に印刷したものを、同じCMYKデータを使って1年後に印刷しても色が変わってしまいます。

不便さの例2 印刷所が変わると色が変わってしまう

 同じCMYKの数値でも、印刷する印刷所によって色が変わってしまいます。

不便さの例3 データ作成時に印刷結果の色が分からない

 同じCMYKのデータでも印刷結果がまちまちになるなら、レイアウトデータ作成時にどのような色になるのか判断できません。

 カラーチャートなどを見ながら絶妙な色に調節したとしても、結局違う色で印刷されるようでは色を調整した甲斐がなくなってしまいます。

CMYKの印刷結果の色を決めたものがある

 CMYKの印刷結果がまちまちになる不便さをなくすため、標準の印刷の色というものを決めてあります。
 おおまかに言うと、色々な印刷所のCMYK印刷の結果を調べて、その平均くらいの色をとってCMYK印刷の標準の色、ということに決めました。

 その決めた標準の色というのが、よく耳にするJapanColorなどです。

前段階の説明3 IllustratorのCMYKドキュメントの印刷結果を確認するにはJapanColorによる印刷結果を見ると良い

 ここまでの説明の通り、CMYKの印刷結果は印刷条件次第でまちまちになってしまいます。
 まちまちであれば、IllustratorのCMYKドキュメントの印刷結果を前もって確認することができません。

 そこで、JapanColorの印刷条件で印刷したときの印刷結果を確認するのが最善の方法です。

印刷所に印刷を依頼するとJapanColorに近い色で刷りあがる可能性が高い

 JapanColorは理屈だけで決めたわけではなく、日本の印刷業界の平均的な色を調べて決められたものなので、どこかの印刷所で印刷したときも近い色で刷りあがる可能性が高いです。

JapanColor標準印刷認証を取得している印刷所ならJapanColorにかなり近く印刷してもらえる

 JapanColor標準印刷認証という認証制度があります。
 JapanColor標準印刷認証を取得している印刷所で印刷すると、JapanColorの印刷条件の範囲で印刷されるので、かなりJapanColorに近い色で印刷してもらえる可能性が高いです。

標準印刷認証の取得は努力が必要

 なお、印刷機は操作するのも難しいですし、機械の整備もマメにし続けていなければ安定して同じ条件で印刷し続けることができません。
 印刷機の部署の人だけでは認証取得は無理で、RIPやCTPを扱っている部署とも一体で網点のコントロールなどをしなければならないので、組織内での知識や意見の交流も必要ですし、リーダーシップを発揮出来る管理職の人も必要です。
 そのように、標準印刷認証を取得するのはけっこう大変です。
 ですので、JapanColor標準印刷認証を取得している会社はおそらくプロのこだわりをもって働いているマメな人たちがいる会社です。

 また、取得後も2年毎に更新審査を受けなければならないので、いつもマメに仕事をする必要があります。

具体的な手順 IllustratorのCMYKデータの印刷結果をモニターで確かめる方法

 ここからはIllustratorのCMYKデータの印刷結果をモニターで確かめる具体的な手順をご説明します。

手順1予定している印刷の印刷条件・印刷色を示すCMYKカラープロファイルを決める

 印刷結果の色を確認するためには、予定している印刷の条件や色を示すCMYKカラープロファイルを用意する必要があります。

 以下によくある印刷条件とCMYKカラープロファイルを示します。

コート紙に枚葉オフセット印刷する場合

 コート紙マットコート紙など、コーティングされている用紙に枚葉オフセット印刷をする場合は以下のCMYKカラープロファイルを使用します。

※枚葉印刷というのは大きいロールの用紙ではなくペラの用紙に印刷する方法です。

Japan Color 2011 Coated

JapanColor2011ICCプロファイルは、(社)日本印刷産業機械工業会 Japan Color認証制度事務局のウェブサイトの以下のページでダウンロードできます。ダウンロードをするにはJapanColor2011 ICCプロファイル使用に対するライセンス契約書に同意する必要があります。

 もしJapan Color 2011 Coatedがなくても、IllustratorにJapan Color 2001 CoatedがあるならJapan Color 2001 Coatedでも大丈夫です。

上質紙にオフセット印刷する場合

 上質紙のようなコーティングされていない用紙に印刷する場合は以下のCMYKカラープロファイルを使用します。

Japan Color 2001 Uncoated

 Japan Color 2001 UncoatedJapan Color色再現印刷2001の上質紙の場合の基準に準拠したカラープロファイルということで、Adobeが作成したものです。

新聞輪転機でオフセット印刷する場合

 新聞紙に新聞輪転機で印刷する場合は以下のCMYKカラープロファイルを使用します。

Japan Color 2002 NewsPaper

 Japan Color 2002 NewsPaperJapan Color 2002 新聞用に準拠したカラープロファイルということで、Adobeが作成したものです。

上質紙・新聞紙以外でオフ輪でオフセット印刷する場合

 上質紙・新聞紙以外の用紙オフ輪で印刷する場合は以下のCMYKカラープロファイルを使用します。

Japan Color 2003 Web Coated

※オフ輪というのはオフセット輪転機の略です。オフセット輪転機は大きいロールの用紙に印刷する印刷機です。

JMPAカラー(雑誌広告基準カラー)による印刷の色を確認する場合

 JMPAカラー(雑誌広告基準カラー)による印刷の色を確認する場合は、以下のCMYKカラープロファイルを使用するのが無難です。

Japan Web Coated(Ad)

 ただし、Japan Web Coated(Ad)日本雑誌協会(JMPA)の公式のICCプロファイルというわけではありませんので、あくまで目安として使用します。

 JMPAカラー(雑誌広告基準カラー)はDDCPの色を基準としたものです。
 よってJMPAカラーの色を正確に確認するためにはJMPAカラー準拠のDDCPの出力物を見る必要があります。

手順2Illustratorのカラー設定で作業用CMYKカラースペースの設定

 Illustratorのカラー設定で、CMYKの作業用カラースペースに手順1で決めたCMYKカラープロファイルを指定します。

操作 [ 編集 > カラー設定 ]と進み、「作業用スペース」のCMYKの欄に、予定している印刷条件を示すCMYKカラープロファイルを指定します。

Illustratorのカラー設定

手順3Illustratorのドキュメントにプロファイルの指定

 IllustratorのCMYKドキュメントに、プロファイルの指定で「作業用CMYK」を指定し、カラー設定の作業用CMYKカラースペースと同じカラープロファイルを指定します。

操作 [ 編集 > プロファイルの指定 ]と進み、CMYKプロファイルを指定します。

ドキュメントのカラープロファイルを指定する

ディスプレイのキャリブレーションが必要

ディスプレイのキャリブレーションが行われている場合

 手順1〜2の作業で、IllustratorのCMYKドキュメントが実際のCMYK印刷の結果の色で表示されました。

 ドキュメントはCMYKデータですが、CMYKの数値カラープロファイルの組み合わせによりIllustratorはデバイスに依存しない表現で印刷結果の色を正しく表示しています。
 キャリブレーションされたディスプレイはIllustratorが示すデバイスに依存しない表現の色を正確に表示します。

キャリブレーションされていないディスプレイで表示している場合

 手順1〜2の作業で、IllustratorはCMYKドキュメントを実際のCMYK印刷の結果の色で表示しています。

 ドキュメントはCMYKデータですが、CMYKの数値カラープロファイルの組み合わせによりIllustratorはデバイスに依存しない表現で印刷結果の色を正しく表示しています。

 ところが、ディスプレイキャリブレーションされていない場合、Illustratorが印刷結果の色を正しく表示していてもディスプレイがそれとは違う色を表示してしまいます

ディスプレイのキャリブレーションは必須

 Illustratorで印刷結果の色を表示する場合、ディスプレイのキャリブレーションは必須の作業です

 ディスプレイのキャリブレーションの方法は以下のブログ記事などをご参照下さい。

どのくらい正確に印刷結果を再現できるか

 以上の方法で表示したときどのくらい正確に印刷結果を再現できるでしょうか。

コート紙やマットコート紙に枚葉オフセット印刷する場合で、Japan Color 2011 Coatedを指定してIllustratorで表示した場合

 JapanColor標準印刷認証を取得していてJapanColor標準印刷を行っている印刷所に印刷を依頼する予定なら、印刷結果とかなり近い色で表示できている可能性が高いです。

 JapanColor標準印刷を行っているわけではない印刷所に印刷を依頼する予定なら、印刷結果とそこそこ似ている色で表示できている可能性があります。

上質紙などコーティングされていない用紙に印刷する場合で、Japan Color 2001 Uncoatedを指定してIllustratorで表示した場合

 JapanColor標準印刷認証を取得している印刷所に印刷を依頼する予定なら、印刷結果とそこそこ似ている色で表示できている可能性があります。

 JapanColor標準印刷を行っているわけではない印刷所に印刷を依頼する予定なら、印刷結果とどのくらい似ている色で表示てきているか不確かですが、濃さなどの再現でそれなりに似ている表示はできているはずで、単純にJapan Color 2001 Coatedなどで表示するよりもはるかに実際の印刷結果寄りの表示ができます。

新聞輪転機で印刷する場合で、Japan Color 2002 NewsPaperを指定してIllustratorで表示した場合

 印刷結果とどのくらい似ている色で表示できているか不確かではありますが、濃さなどの再現ではそれなりに似ている表示ができているはずです。
 単純にJapan Color 2001 Coatedなどで表示するよりもはるかに実際の印刷結果寄りの表示ができます。

上質紙・新聞紙以外の用紙にオフ輪で印刷する場合で、Japan Color 2003 Web Coatedを指定してIllustratorで表示した場合

 印刷結果とどのくらい似ている色で表示できているか不確かではありますが、濃さなどの再現ではそれなりに似ている表示ができているはずです。
 単純にJapan Color 2001 Coatedなどで表示するよりは実際の印刷結果寄りの表示ができます。

JMPAカラー(雑誌広告基準カラー)による印刷の場合で、Japan Web Coated(Ad)を指定してIllustratorで表示した場合

 印刷結果にそこそこ似ている表示ができている可能性が高いです。

 事務所にJMPAカラー準拠のプリンターがあるなら、実際にプリンターで出力してみて比較してみれば確認できます。

 以上、IllustratorでCMYKデータ作成段階で、CMYKのオフセット印刷の結果がどういう色になるかディスプレイ上で確認する方法をご紹介しました。

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