カラーマネジメント対応ソフトの操作 カラーマネジメントでよくある疑問

インクジェットプリンタでオフセット印刷の色をシミュレートする手順

投稿日:2017年1月10日 更新日:

 家庭用インクジェットプリンターでオフセット印刷の色をシミュレートすることはできます。
 ただし、プリンターの色域や階調の再現性、デバイスのキャリブレーションの精度などの問題その他の影響で、シミュレートの正確さは大きく異なってくることは認識しておく必要があります。
 ここでは家庭用インクジェットプリンターでオフセット印刷の色をシミュレートする手順をご紹介します。

インクジェットプリンターでオフセット印刷の色をシミュレートするための前提条件

JapanColorを基準色としてオフセット印刷すると仮定

 ここで説明する方法は、オフセット印刷の仕上がりの色としてJapanColorの色と仮定してシミュレートしています。

 よって、JapanColorを基準色として印刷を行っている印刷所に印刷を依頼する場合なら、ある程度近い色になる可能性があります。

 一方、JapanColorを基準色としておらず、独自の色で印刷している印刷所に印刷を依頼する場合は、近い色になる保証はありません。
 どういう印刷結果になるかは印刷所に聞かなければ分かりません。

ご自分のモニター、プリンターのキャリブレーションの精度によっては全然似ないこともあり得る

 以下で説明する方法は、モニターやプリンターなど自分で使用するデバイスのキャリブレーションの精度やデバイスプロファイルの精度が悪い、またはキャリブレーションやデバイスプロファイル作成の方法が間違っている、といった場合は全く成り立ちません。

 特にプリンターの出力プロファイルの自作は少し設定を間違えただけで不良品のカラープロファイルが出来上がることもあります。

作業手順を間違うと異常な色で出力されることもあり得る

 色をシミュレートしてプリンター出力するまでの各種設定項目で、少し設定を間違うと異常な色で出力されることもよくあります。

 よって、ここで説明する方法はあくまで目安と考えて下さい。
 もし印刷所が出力した色校とご自分でシミュレートしてインクジェットプリンターで出力したものが全然違った場合、ご自分の手順がどこか間違っている可能性もあります。

オフセット印刷の色でプリンター出力するまでのおおまかな流れ

 インクジェットプリンターによるオフセット印刷の色のシミュレートは、おおまかに以下のような流れで行います。

※これは簡易的な設備でできる一例です。業務用の機器の場合は別の処理の流れもあります。

  1. カラーマネジメント対応アプリケーションソフトのドキュメントにオフセット印刷用CMYKカラープロファイルを指定し、データ上でオフセット印刷の色をシミュレート
  2. シミュレートした色を、プリンター出力用カラープロファイルを使用してインクジェットプリンターで出力

オフセット印刷の色のシミュレートのおおまかな流れ

 この流れの他に、自分の行っている作業が正しく行われているかどうか確認するためにディスプレイのキャリブレーションが必要です。

オフセット印刷の色でプリンター出力する、具体的な手順

 ここから、オフセット印刷の色でプリンター出力するための具体的な手順をご説明します。

1.準備 ディスプレイのキャリブレーション

 カラーマネジメントでは、カメラ、ディスプレイ、プリンター、印刷機などのデバイスそれぞれの色を、デバイスに依存しない共通の表現方法にカラープロファイルを使って変換して示し、デバイス間で色を受け渡しします。

共通の色空間を使ってデバイス間で色を受け渡しする

 そのため、カラーマネジメントの仕組みを利用して作業する場合、デバイスに依存しない共通の色空間で示された色を見られないと大変作業がしにくいです。
 カラーマネジメントを利用した作業に慣れていない人の場合、共通の色空間の色を見ることができなければ作業できないと言ってもいいほどです。

 そこで、デバイスに依存しない色空間の色を見るためにディスプレイのキャリブレーションが必要になります

 Adobe® Illustrator®などのカラーマネジメント対応アプリケーションソフトでデータを表示し、キャリブレーションされたディスプレイに表示させることでデバイスに依存しない色空間の色を正確に見ることができます。

 一方、キャリブレーションされていないディスプレイを使った場合、Adobe® Illustrator®などのカラーマネジメント対応アプリケーションソフトがデバイスに依存しない色を正確に示していても、それとは違う色をディスプレイが表示してしまいます。

2.準備 プリンター用の出力プロファイルの用意

 インクジェットプリンターから、データが示すデバイスに依存しない色を正確に出力するための、プリンター出力用のカラープロファイルを用意します。

用紙とプリンターの組み合わせに対して1つの出力プロファイルが必要

 使用する用紙とプリンターの組み合わせに対して1つの出力プロファイルが必要です。

 オフセット印刷の色をシミュレートしてインクジェットプリンターで出力する場合、紙質はできるだけ本番用紙と似ているものを使用した方が近い見た目に出力できます。

 コート紙で印刷するなら光沢のあるインクジェット用紙、つや消しコートや上質紙などに印刷する予定ならツヤのないインクジェット用紙を選びます。

発色の悪いオフセット印刷のシミュレートでも、発色の良いインクジェット用紙を使う

 上質紙や新聞紙などへのオフセット印刷のように、あまり発色の良くない条件でオフセット印刷する予定のときも、インクジェット用紙には発色の良い用紙を選ぶべきです。

 発色の良いインクジェット用紙には彩度の高い色から濁ったりくすんだりした発色の悪い色まで出力可能です。

 一方、インクジェットプリンターに発色の悪い用紙を使用した場合、再現できる色域が狭くなるので、オフセット印刷の結果の色でインクジェットプリンターでは再現できない色があった場合、シミュレートの精度が落ちてしまいます。

 30cmの定規で32cmのものは計れませんが、50cmの定規があれば32cmのものも余裕で計れる、ということに似ています。

プリンターメーカー純正のインクジェット用紙を使用する場合

 プリンターメーカー純正のインクジェット用紙とプリンターの組み合わせに対する出力プロファイルは、プリンターメーカーが用意してくれています。

 プリンタードライバーのインストール時に出力プロファイルもインストールされている場合が多いです。
 または、プリンターメーカーのウェブサイトでダウンロードできるようになっている場合もあります。

 ただし、プリンターメーカー配布のプリンタープロファイルでは、プリンターの色の経時変化や個体差は解消できません。

 プリンターの色の経時変化や個体差も補正して高い精度でオフセット印刷の色に近づけたい場合は、プリンタープロファイルを作成する必要があります。

プリンターメーカー純正紙以外でも出力プロファイルが提供されている場合もある

プリンターメーカー純正紙でなくても、ピクトリコのようにインクジェット用紙メーカーで、自社の用紙と有名プリンターメーカーの各機種の組み合わせに対する出力プロファイルを提供している場合もあります。

例 ピクトリコのICCプロファイルダウンロードページ

プリンターメーカー純正紙以外の用紙を使用する場合

 プリンターメーカー純正紙以外の用紙を使用する場合、用紙メーカーからも出力プロファイルが提供されていなければ出力プロファイルを自作するなどして用意する必要があります。

3.カラーマネジメント対応アプリケーション上でオフセット印刷の色のシミュレート

 ディスプレイのキャリブレーションとプリンターの出力プロファイルの準備ができたら、アプリケーションソフトで色をシミュレートして出力する作業に進んでいきます。

 ここではAdobe® Illustrator®を例にして説明します。

3-1.アプリケーションソフトのカラー設定

 アプリケーションソフトのカラー設定をします。
 
 カラー設定の作業用CMYKカラースペースの欄で、シミュレートしたいオフセット印刷の条件に合ったCMYKカラープロファイルを指定します。

Illustratorのカラー設定で作業用CMYKカラースペースの設定

 予定しているオフセット印刷の条件に最も合うカラープロファイルはどれか、以下の説明を参考にして決めて下さい。

コート紙に枚葉オフセット印刷する場合

 コート紙やマットコート紙など、コーティングされている用紙に枚葉オフセット印刷をする場合は以下のCMYKカラープロファイルを使用します。

※枚葉印刷というのは大きいロールの用紙ではなくペラの用紙に印刷する方法です。

Japan Color 2011 Coated

 Japan Color 2011 ICCプロファイルは、(社)日本印刷産業機械工業会 Japan Color認証制度事務局のウェブサイトの以下のページでダウンロードできます。ダウンロードをするにはJapan Color 2011 ICCプロファイル使用に対するライセンス契約書に同意する必要があります。

 もしJapan Color 2011 Coatedがなくても、IllustratorにJapan Color 2001 CoatedがあるならJapan Color 2001 Coatedでも大丈夫です。

上質紙に印刷する場合

 上質紙のようなコーティングされていない用紙に印刷する場合は以下のCMYKカラープロファイルを使用します。

Japan Color 2001 Uncoated

 Japan Color 2001 UncoatedJapan Color色再現印刷2001上質紙の場合に準拠したカラープロファイルということで、Adobeが作成したものです。

新聞輪転機で印刷する場合

 新聞紙に新聞輪転機で印刷する場合は以下のCMYKカラープロファイルを使用します。

Japan Color 2002 NewsPaper

 Japan Color 2002 NewsPaperJapan Color 2002 新聞用に準拠したカラープロファイルということで、Adobeが作成したものです。

上質紙・新聞紙以外でオフ輪で印刷する場合

 上質紙・新聞紙以外の用紙オフ輪で印刷する場合は以下のCMYKカラープロファイルを使用します。

Japan Color 2003 Web Coated

※オフ輪というのはオフセット輪転機の略です。オフセット輪転機は大きいロールの用紙に印刷する印刷機です。

 Japan Color 2003 Web Coatedは商業オフ輪用ジャパンカラーに準拠したカラープロファイルということで、Adobeが作成したものです。

JMPAカラー(雑誌広告基準カラー)による印刷の色を確認する場合

 JMPAカラー(雑誌広告基準カラー)による印刷の色を確認する場合は、以下のCMYKカラープロファイルを使用するのが無難です。

Japan Web Coated(Ad)

 ただし、Japan Web Coated(Ad)日本雑誌協会(JMPA)の公式のICCプロファイルというわけではありませんので、あくまで目安として使用します。

 JMPAカラー(雑誌広告基準カラー)はDDCPの色を基準としたものです。
 よってJMPAカラーの色を正確に確認するためにはJMPAカラー準拠のDDCPの出力物を見る必要があります。

3-2.シミュレートしたいドキュメントにプロファイルを指定

 オフセット印刷の色をシミュレートして出力したいドキュメントを開きます。

 [ 編集 > プロファイルの指定 ]と進み、ドキュメントのプロファイルに作業用CMYKを選び、カラー設定の作業用CMYKカラースペースと同じカラースペースを指定します。

ドキュメントのプロファイルに作業用CMYKを指定

 これで、Illustratorのドキュメントは予定している条件のオフセット印刷の印刷結果をシミュレートした状態で表示されています。

3-3.プリンタープロファイルでカラーマネジメントを行ってインクジェットプリンターで出力

 Illustrator上でオフセット印刷の結果の色をシミュレートすることができましたので、この色のままインクジェットプリンターで出力します。

 プリンターに用紙をセットし、その用紙とプリンターの組み合わせに対応したプリンタープロファイルを使用してインクジェットプリンターで出力します。

 以上、家庭用インクジェットプリンターでオフセット印刷の色をシミュレートする手順をご紹介しました。

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