カラーマネジメントの理屈

AdobeRGBのデータを扱えるか? 決め手はモニターではなくソフトの方

投稿日:2016年9月20日 更新日:

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 AdobeRGBの色域を表示可能なディスプレイがなければAdobeRGBのデータは扱えないという誤解も多く見られます。

 ここでは、AdobeRGBのデータを扱えるかどうかの決め手はディスプレイの色域ではなく、データを扱うソフトウェアの方であることをご説明します。

AdobeRGBのデータはAdobeRGBをカバーしたモニターでしか扱えないという誤解がある

 AdobeRGBのデータは、AdobeRGBの色域をカバーしたモニターを使わなければ扱えない、と思われがちです。

 実際は、AdobeRGBのデータはAdobeRGBより狭い色域のモニターでも扱えます。

AdobeRGBより色域が狭いモニターなら、確かにAdobeRGBのすべての色は表示できない

 例えばsRGBくらいの色域しか表示できないモニターを使うとします。

 sRGBはAdobeRGBよりは色域が狭いので、sRGBくらいの色域のモニターではAdobeRGBで表現できる全ての色を表示する、ということはできません。
 一部分、表示できない色があります。

カラーマネジメントシステムは狭い色域の色空間への変換もできる

 現代の、色を扱う様々なデバイスの色域は、人の視覚で感じることのできる色域に比べるとかなり狭いです。
 カラーマネジメントシステムでは、そのようなデバイス間で色を変換しながら渡していきます。

 それほど色域が広いわけではないデバイス間で色を変換していくので、たいてい変換後の色域では再現できない色が出てきます。

 そこで、再現できない色があれば色域圧縮という処理を行って変換する仕組みになっています。
 これによって、AdobeRGBのデータをsRGBくらいの色域のモニターで表示する、というようなことも可能になっています。

色域圧縮を楽器にたとえてみる

 鍵盤の数が88の普通のピアノのために作られた曲があるとします。

 この曲を、鍵盤の数が61しかないキーボードで弾こうとした時、鍵盤が足りなくて弾けない音があったとします。

 このとき、鍵盤が足りないからといって全く弾くのが無理、というわけではありません。
 鍵盤が足りなければ1オクターブ異なる音を鳴らすなりのアレンジをすることで、元の曲が弾けます。

 色域圧縮を利用してAdobeRGBのデータをsRGBくらいの色域のモニターで表示することは、これと似ています。

鍵盤数の異なる楽器で、同じ曲をある程度正常に弾ける

アプリケーションソフトがICCカラープロファイルを解釈できるならAdobeRGBのデータを扱える

 データはカラープロファイルを埋め込めば絶対的な色を持てます。絶対的な色を持たせられるおかげでカラーマネジメントが実現しています。

 Adobe® Photoshop®など、カラーマネジメントに対応しているアプリケーションソフトはICCカラープロファイルを解釈でき、データが持っている絶対的な色を理解して扱うことができます。

 カラーマネジメント対応のアプリケーションでデータを扱えば、ディスプレイプリンターCTP+印刷機、などが色域が狭くても広くても壊れていても、AdobeRGBのデータ自体は正確に扱えます。

AdobeRGBのデータを狭い色域のディスプレイで表示するとどうなるか

 Photoshopなどのカラーマネジメント対応のアプリケーションソフトで開いたAdobeRGBのデータを、AdobeRGBよりずっと狭い色域しか表示できなディスプレイで表示した場合は次のようになります。

 AdobeRGBからディスプレイの表示特性を示すカラープロファイルに、プロファイル変換に相当するような変換処理が行われたうえで、ディスプレイに表示されます。

 その結果、データに存在する色のうちディスプレイの色域外にあり表示しきれない色は、表示できる範囲の色に置き換えられます。
(これは通常のプロファイル変換でも行われることです。そのように色域が異なるデバイス間で色を渡していくのがカラーマネジメントというものです。)

 適正にプロファイル変換をして表示を行っているので、色域は狭いものの、正確な色で表示されています。

※ただし、キャリブレーションをとれていないディスプレイの場合、「ディスプレイの表示特性を示すカラープロファイル」が正確に表示特性を示せていないので、正確な色が表示できません。

AdobeRGBのデータを色域の狭いプリンターで出力するとどうなるか

 AdobeRGBのデータをAdobeRGBよりずっと色域の狭いプリンターで出力した場合、次のようになります。

 AdobeRGBのデータから、プリンターの出力の特性を示すカラープロファイルへ、プロファイル変換に相当するような変換処理が行われた上で、プリンター出力されます。

 そのとき、元のデータに存在する色のうちプリンターの色域外にあり表現できない色は、プリンターの色域で表現できる色に置き換えられます。
(カラーマネジメントはそのようにして異なる色域のデバイス間でデータを渡していくしくみです。)

 適正にプロファイル変換をしてプリンター出力が行われいるので、色域は狭いものの、正確な色でプリンター出力が行われています。

※ただし、プリンターのキャリブレーション、出力プロファイル作成が行われていない場合、「プリンターの出力特性を示すカラープロファイル」が正確に出力特性を示せていないので、正確な色で出力はできません。

AdobeRGBのデータから狭い色域のオフセット印刷を行うとどうなるか

 AdobeRGBのデータから、狭い色域のオフセット印刷を行った場合、次のようになります。

 オフセット印刷の場合、「RIP+CTP+印刷機」という辺りの機器を一まとめに見て一個のCMYKプリンターと考えれば、普通のプリンターと同じように考えることができます。

 あらかじめ、AdobeRGBから「RIP+CTP+印刷機」と使用用紙の組み合わせに対応するCMYKカラープロファイルへプロファイル変換します。

 プロファイル変換した結果、元のデータに存在する色のうちCMYKカラープロファイルの色域外にありオフセット印刷で表現できない色は、表現できる色域内の色に置き換えられます。
(プロファイル変換というのはそういうものです。)

 オフセット印刷で表現可能な色域にプロファイル変換したCMYKデータを「RIP+CTP+印刷機」に送って印刷を行います。

 完成品の印刷物は、元のデータより色域は狭くなっているものの、適正にプロファイル変換を行って印刷しているので正確な色で印刷されています。

※ただし、JapanColor標準印刷の条件で印刷を行いJapanColor2011などのCMYKプロファイルを使用する、または自社独自の印刷条件と独自のCMYKプロファイルを使用する、というように印刷の標準化を適正に行っていない場合、CMYKプロファイルが印刷の特性を示せていないので、正確な色で印刷はできません。

カラーマネジメントに対応していないソフトでAdobeRGBのデータを扱うとどうなるか

 カラーマネジメントに対応していないソフトでAdobeRGBのデータを扱った場合、以下のようになります。

無理やりsRGBを指定した状態になったりする

 AdobeRGBのデータをカラーマネジメントに対応していないソフトで開いたとします。
 すると、RGB値はそままで、無理やりsRGBが指定された状態で表示されるかもしれません。

 AdobeRGBのデータのRGB値をそのままにしてsRGBを無理やり指定すると、色が変わってしまいます。

 現在、カメラやモニターやプリンターなどで共通に使える標準色空間がsRGBであるため、データのプロファイルは無視して全てsRGBで扱う前提になっている場合がよくあるためです。

ディスプレイの色空間で単純に表示した色になったりする

 ソフトによっては、AdobeRGBのデータを開いてもsRGBのデータを開いてもプロファイルは無視されて、単純にディスプレイの色空間で表示されるかもしれません。

 ディスプレイはそれぞれに表示特性があり、完璧にsRGBの特性やAdobeRGBの特性を示すディスプレイはありません。

 そのため、AdobeRGBのデータが単純にディスプレイの色空間で表示されると、色が変わってしまいます。

 このように、カラーマネジメントに対応していないソフトではAdobeRGBのデータは扱えないことになります。

結論

 以上の説明のように、カラーマネジメントは表現できる色域の異なるデバイス間で色を受け渡しできる仕組みであり、アプリケーションソフトがカラーマネジメントに対応していれば、ディスプレイの色域に関係なくAdobeRGBのデータが扱えます。

 一方、カラーマネジメントに対応していないソフトではAdobeRGBのデータを正しく扱うことができません。

 以上、AdobeRGBのデータを扱えるかどうかの決め手はディスプレイの色域ではなく、データを扱うソフトウェアの方であることをご説明しました。

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